「万引き家族」の魅力

「万引き家族」は是枝裕和による映画で、2018年に公開されました。
是枝裕和はこれまでにも国内はもちろんのこと、国外の映画祭で賞を受けていますが、「万引き家族」ではカンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」を受賞しています。

第71回のカンヌ国際映画祭で「万引き家族」が上映された際には、9分もの間スタンディングオベーションが続きました。
日本の映画がカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞するのは、今村昌平監督の「うなぎ」以来21年ぶりのことです。

キャストには、是枝裕和と何度か一緒に仕事をしている樹木希林の他にリリー・フランキーや安藤サクラ、松岡茉優などが配されており、絶妙のアンサンブルを醸し出しています。

映画の主なロケ地となったのは東京都荒川区で、廃屋となっている民家が主人公家族の家として使用されています。
ジョイフル三ノ輪商店街や千葉県いすみ市の大原海水浴場なども登場し、地方色豊かな仕上がりとなっているのがこの映画の特徴です。

なお、この映画はパルムドールだけでなくミュンヘン国際映画祭やバンクーバー国際映画祭、外国インディペンデント映画賞など数多くの賞を受賞しています。
国内でも、第42回日本アカデミー賞では最優秀作品賞をはじめ、13もの賞を受賞しました。
毎日映画コンクールでも日本映画大賞・女優主演賞・女優助演賞を受賞するなど、輝かしい業績を残しています。

「万引き家族」のあらすじ

東京の下町に住んでいる、貧しい家族を軸に映画は展開していきます。
リリー・フランキーが演じる柴田治は妻と息子、妻の妹、そして治の母の5人で生活していますが、収入となるのは治と妻の給料の他に治が息子とやっている万引き、そして治の母の年金です。

表向きは普通の家族として暮らしている柴田家ですが、パチンコ屋で他の客のドル箱を着服したり、クリーニング店で衣類のポケットからアクセサリーを盗んだり、何かしらの「悪事」を働いているというのが現状です。

一家で海水浴に出かけたりもしますが、治の母は次第に高齢が進み、とうとう自宅で亡くなってしまいます。
治たちは葬儀の手配をするどころか、母親を敷地内に埋め年金を不正に引き出すことを決めてしまいます。

治の息子は万引きしたところを見つかって高いところから飛び降り負傷しますが、ここから家族は一気に崩壊の道をたどることになります。
治は実は母親とは血縁関係がなく、息子も妻の連れ子であり、家族とはいえ治は誰とも血のつながりがなかったこと、治と妻は以前に殺人を犯していたことなどが発覚します。

結局、妻が全責任を負って刑に服し、治は一人暮らしの生活をすることになります。
そこに至るまでのどうしようもない運命を演じる、俳優陣の熱演が光る名作です。